選手の皆さん、認知行動療法という言葉を聞いたことがありますか?精神疾患の治療にも用いられる【心理療法】のことです。
今回は、アスリートのセルフコーチングにも使うことができる、【アスリート版:認知行動療法の応用方法】についてご紹介します。
パフォーマンスを発揮する為、メンタルを整える為、広い用途で使えますので、ぜひ実践してみてください。
認知行動療法とは何か?
認知行動療法とは、
2016年 公益財団法人矯正協会 出版『伊藤絵美の認知行動療法入門講義 上』p32から引用
「ストレスの問題を認知(頭の中の考えやイメージ)と行動(実際のパフォーマンス)の工夫を通じて、自己改善するための考え方と方法の総称」
となります。
つまり、ストレスにうまく対処していくための「考え方」と「行動」を身に着けようという、治療法になります。
実はこれ、治療だけにとどまらず、普段から私たちも日常的に無意識に使っているんです。
例えば、朝練に行きたくない時、ものすごいストレスを感じているとします。しかし、朝練にいなければならないという事実は変わりません。
そこで、「この朝練に行けば、もっと強い自分になれる」「とりあえず玄関に行ってみよう」などと、考え方や行動を工夫しながら、なんとかストレスのある状況を乗り越えていくことができていますよね。
このように、「考え方」と「行動」のレパートリーを増やしておくことで、その都度、対処をすることが楽になっていくのです。
アスリートがセルフコーチングに使う方法
上記では、「考え方」と「行動」を増やしておくことで、【ストレス場面】や【緊張するシーン】への対処が楽になっていくというお話をしてきました。
これは、アスリートの練習場面や試合場面でも活用することができます。
例えば、練習場面。ものすごく辛い練習を、やらなくてはならない場面。
辛いからやりたくない、という気持ちがあるのは当然ですよね。
そこで、「考え方」と「行動」の工夫で、何とか乗り切れそうな方法をいくつか用意しておきます。
【例:「これを乗り越えれば、昨日よりも強い自分になれる」「手を抜いたら試合で負けるから、全力でやる」「テンションを上げるために身体を叩いてみる」】
ちなみに、「考え方」と「行動」のレパートリーは多ければ多いほど良いです。
思いつく限り書き出してみて、対処法を沢山準備していきましょう。
実際にやってみよう
上記の例を元に、実際に「考え方」と「行動」のレパートリーを増やしていきましょう。
それでは、以下の手順に沿って、一緒に考えていきます。
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①「ストレス場面」や「緊張するシーン」を1シーン取り上げてください。
先ほどの例のように、【きつい練習】だったり【結果を出したい大会】など、自分にとって、ストレスがかかる場面や緊張するシーンを1つ取り上げてみます。
(作業時間:5分)
②自分がよりパフォーマンスを発揮できるように、「考え方」のレパートリーを沢山あげてみます。
例えば、先ほどのきつい練習に取り組まなければならない場面では、「 これを乗り越えれば、昨日よりも強い自分になれる」「手を抜いたら試合で負けるから、全力でやる 」などの【考え方の工夫】が上がりました。
できるだけ沢山考えることがポイントです。時間を決めて、その中でなるべくたくさんの「考え方」を上げてみてください。最低10個は書き出しましょう。
(作業時間:10分)
③ 自分がよりパフォーマンスを発揮できるように、「行動」のレパートリーを沢山あげてみます。
上記の「考え方」と同様に、「行動」の面でも工夫できそうな対処法を沢山上げていきます。先ほどの例であれば「 テンションを上げるために身体を叩いてみる 」が、その例ですね。
制限時間を決めて、なるべく沢山書き出してみます。最低10個は書き出しましょう。
(作業時間:10分)
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作業してみて、いかがでしたか?
「考え方」「行動」のレパートリーを増やしていくことで、状況に応じて、より柔軟に対処することができますよ。
どの場面、どのシーンにおいても、使える方法なので、ぜひ色々な場面に当てはめて試してみてくださいね。
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心理療法として使われる認知行動療法ですが、私たちの日常生活や競技場面においても使うことができるのですね。
「考え方」「行動」のレパートリーを増やしていくことが、チャレンジへのハードルを下げてくれるので、競技力の向上・練習、試合の質の向上にもつながっていくはずです。
ぜひ試してみてくださいね^^
(引用)
(2016)公益財団法人矯正協会.『伊藤絵美の認知行動療法入門講義 上』.p32