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【アスリートこそ意識してほしい】心の休息の重要性について

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選手の皆さん、OFFの日には【心の休息】をしっかりと取れていますか?

スポーツをしていると、【身体を休めること】に特に意識が行きがちですが、【心を休めること】も競技をしていくには同様に大切です。
そこで今回はアスリートにとっての【心の休息の重要性とコツ】について書いていきたいと思います。

OFFの日が終わったあとも何となく疲れがとれない選手、練習と休みの切り替えがうまくいかない選手はぜひ読んでみてくださいね。

1.アスリートにとって心の休息はなぜ大切なのか

①競技の世界はストレスフルだから

選手の皆さんが身を置いているスポーツの世界は、勝った時の喜び、競技をやる楽しさ、仲間と一緒に高めあうこと…etc
本当に素晴らしい体験も味わえる一方で、とてもストレスの多い環境です。

例えば、勝負の世界では一瞬の隙が勝敗を決めてしまったり、ミスが許されない場面など、緊張の高まる状況が非常に多いですよね。

また、行きたくないときにも、自分を奮い立たせて練習へ行くことだったり、チームメイトや指導者とのコミュニケーションの問題、自分のプレーがうまくいかないときの歯がゆさetc…

試合以外の場面でも、色々なストレスがあると思います。

選手の皆さんは、日々このような環境の中で自分自身と戦っているのではないでしょうか。

厳しい状況の中で、自分なりの息抜きができたり、気持ちを発散させたり、、、心の健康を保つための休息ができていれば良いのですが、「休むことに罪悪感を感じる」「休みの日に結局何もできずに終わってしまう」など、特に真面目な選手は上手に休めない人も多いと聞きます。

そのようなストレスフルな状況が続くと、心の健康が保てなくなるというリスクもあります。

②心の休息で、バーンアウトや精神疾患につながるリスクを軽減する

先ほども少し述べましたが、
ストレスを自覚しその都度対処することができれば、健康が維持されるものの、心のエネルギーが枯渇している状況で頑張り続けてしまうと、深刻な状態に陥ることもあります。

例えば、FIFProが2015年に発表した「プロサッカーにおける心の健康問題の調査 によれば、現役選手の38%が不安障害やうつ病に苦しんでいるというデータがあります。
さらに、五輪で23個の金メダルを獲得した水泳のマイケルフェルプス選手も、うつ病やアルコール依存症を患っていた過去があります。

このような事例があるように、過酷な競技生活や勝利を追い求めねければならないプレッシャー、選手自身の心の在り様などからも、アスリートと精神疾患は常に隣り合わせであると考えられます。

今回は、そんな厳しい環境に身を置いているアスリートの皆さんが、競技の中で感じるストレスをその都度クリアにしていくための、【心の休め方のコツ】をご紹介していきます。
身体を休めることと合わせて、ぜひ意識してみてくださいね。

2.アスリートが心を休めるためのコツ

常に緊張感と隣合わせのアスリートの皆さんが、緊張を緩めて【心を休めていく】ためにはどのようなことを意識すればよいのでしょうか?
今回は、時系列で3つのポイントをご紹介します。

①休む前に意識したいこと

まず、OFFの日の前や練習後の休息時間の前など、「休む前」に意識しておくと良いことは、【これから休むんだ】という意識を持つことです。

当然ながら、練習をした後や試合をした日というのは、緊張感が高まっています。その状態のまま、なんとなく休みに入ってしまうと、休み後の練習で「休んだ気がしない」という疲れが残ってしまうこともあります。

例えば、運動の後にクールダウンという体を緩めていく動作を行ったりしますよね。身体同様に、心も徐々に休みに向けてクールダウンしていく必要があります。
最初はなかなか難しいかもしれませんがまず一歩目として、休むための心構えをつくっていくと良いですよ。

②休んでいるときに意識したいこと

心を休める準備が整ったら、実際に休息の時間を「緊張が緩まっている状態」で過ごしていきましょう。

「緊張を緩める」ために特に、意識したいことは

■今この瞬間に意識を集中する
■時間を決めて休む

ということです。

紅茶を飲む、アロマをたきながらストレッチする、一人静かに勉強をする、親しい友達と会話する、 ピアノを弾いてみる、瞑想をする…etc
どのようなことをしていても良いのですが、その作業や時間を楽しんだり、癒されたり、【心地よい感じ】を十分に味わっていることが重要になります。

その時間は、
未来への不安(今休んでいる場合なのか?/勝てなかったらどうしよう…)
過去への後悔や罪悪感(昨日の練習全然ダメだったな…)
はいったん置いておいて、「今やっていること」に意識を集中していきましょう。

また、時間を決めることで、その時間は休むことにより集中しやすくなるのでおすすめです。

③競技に戻る前に意識したいこと

このように緊張を緩めて休んだ後に、また厳しい現実に戻っていくには、徐々に気持ちを高めていく必要があります。

ここで、気持ちが緩んだまま元に戻らない、となってしまうと練習に戻ることがとてもつらくなってしまい、うまく練習に適応できなくなってしまいます。

どのようなことでも構いません。少し緊張を取り戻すためのエクササイズをすることや、競技に関連する動画を見ること、など自分なりに緊張感を徐々に取り戻す方法を考えてみましょう。
なんのために競技をやるのか、などをもう一度確認してみたり、競技への意識づけやモチベーションを高めることをしても良いですね。

休むことにも、スキルが必要です。最初はうまくいかないかもしれませんが、粘り強く取り組み、上手に休むことに取り組んでみてくださいね。

*******
緊張がずーっと張りつめている状態が続くことで、心の健康が損なわれてしまうこともあります。こまめに「緩める」ことを意識して、ぜひ結果も健康も、同時に手に入れていきましょう^^

(参考・引用)
サッカー選手の38%がうつ、不安障害。 数字が示すストレスと心の病の関係
うつや不安障害など “メンタルの問題”を共有する選手たち
中込四郎,鈴木壮(2017)アスリートのこころの悩みと支援,誠信書房

-競技ストレス, 練習

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